「駒田蒸留所へようこそ」なぜウイスキーだったのか、早見沙織&小野賢章が語る仕事とは

左から内田真礼、早見沙織、小野賢章、吉原正行監督。

P.A.WORKSによるオリジナル劇場アニメ「駒田蒸留所へようこそ」の上映が、「第36回東京国際映画祭」の一環として、本日10月28日に東京・角川シネマ有楽町で行われた。

11月1日まで開催中の同映画祭。その「ジャパニーズ・アニメーション部門」にピックアップされた「駒田蒸留所へようこそ」は、ジャパニーズウイスキーの蒸留所を舞台に、実家の駒田蒸留所の再起に奮闘する若き女性社長・駒田琉生(こまだるい)と、夢もやる気もない新米編集者・高橋光太郎が、幻のウイスキー・KOMAの復活を目指す物語が紡がれる。アニメーション制作は、これまで“お仕事シリーズ”として「花咲くいろは」「SHIROBAKO」「サクラクエスト」「白い砂のアクアトープ」などを手がけてきたP.A.WORKSが手がける。

上映前に開催された舞台挨拶には、琉生役の早見沙織、光太郎役の小野賢章、駒田蒸留所の広報担当・河端朋子役の内田真礼、吉原正行監督が登壇。MCは「ジャパニーズ・アニメーション部門」のプログラミングアドバイザー・藤津亮太が務めた。ウイスキーという題材を選んだ理由について問われると、吉原監督は「蒸留所のウイスキーづくりって、働き始めてから成果物が手に入るまでに最低3年はかかるんです。時間をかけたものだと10年以上とものすごく時間がかかる。それに向き合っていくためのモチベーションを、今の若者に向けて描ければと考えたときに、ウイスキーの現場がよい題材となるなと」と語る。また取材については「いろいろな蒸留所に行きました。飲んだくれていたわけではないですよ(笑)」と笑いを誘ったうえで、「けっこう若い方が働いているんです。ウイスキーが大好きで、一所懸命にマニアックな言葉で説明してくれて、若いのに自分の仕事にこれだけ夢中になって話してくれたことがうれしかった。まさに映画で描きたかったことでした」と振り返った。

演じたキャラクターの印象に残ったシーンについて質問が及ぶと、早見は2つあると言い、「蒸留所に取材に来る高橋さんとのやりとり。最初は距離があるんですけど、とあることをきっかけに変わっていって。ちゃんと間にウイスキーもあるのでそこのやりとりが1つ。もう1つは幻のウイスキーを巡ってのお母さんとのシーンですね。ラストにかけて胸を打つ素敵なシーンなのでぜひ楽しみにしていただきたいです」と笑顔を向ける。小野は「琉生とは正反対で、仕事に熱が入らずなんとなく生きている光太郎が、居酒屋で『俺にはこの仕事向いてないかも』と友達に愚痴をこぼすシーンがあるんですけど、その会話が、居酒屋の隣の席で聞いたことがあるぞというくらいリアルで。すごく共感してもらえるんじゃないかな」と発言。内田は演じた朋子について、喜怒哀楽がはっきりしている子と説明し、「高橋さんに対して何度も怒るんですけど、それって大事に思ってないとできないなって。仕事に対しても何かあったら怒って、会社を守ろうとする。怒っているシーンが多かったんですけど、彼女の熱意を見れた気がして好きですね」と伝えた。

また作品にちなみ、「仕事について思うこと、思っていること」という質問が飛ぶ。早見は「今日やったことが、すぐ成果になって返ってくることってあまりなくて。忘れた頃に返ってきたり、100%力を注いでも予期せぬトラブルが起こってくじけそうになったり。この映画で描かれていることって、自分の生き方や仕事の中でもよく起きていることなんじゃないかなって。でも今はあのときがんばったから、今がある。そう思えるための種まきみたいだなって思えます」と反芻する。小野は「20代は楽しいことが先行していたけど、30代になって皆さんの前に立つことが増えて、責任感を意識することが増えました」と述懐し、「『知っていくこと』ってすごく大事だなと思っていて。光太郎は無知のままでいたことでミスを起こしてしまうんですけど、仕事をどんどん知っていくことで仕事が楽しくなっていく。映画ではそこが丁寧に描かれているので、映画を通して知っていく喜びを感じてもらえるんじゃないかな」と続けた。

最後の挨拶で早見は「楽しんでいただいて何か胸に残るものがあれば」、小野は「仕事しんどいけどもう少しがんばってみようかなって思ってもらえる作品だと思います」とコメント。内田は「観終わった後に、爽やかな風が吹くような、とても清々しい気持ちになる1本です」とアピールし、吉原監督は「今晩はウイスキーで乾杯してください」とメッセージを贈り、舞台挨拶は締めくくられた。

映画「駒田蒸留所へようこそ」

2023年11月10日(金)全国公開

スタッフ

原作:KOMA復活を願う会
監督:吉原正行
脚本:木澤行人、中本宗応
キャラクター原案:高田友美
キャラクターデザイン・総作画監督:川面恒介
音楽:加藤達也
アニメーション制作:P.A.WORKS
製作:DMM.com
配給:ギャガ

キャスト

駒田琉生:早見沙織
高橋光太郎:小野賢章
河端朋子:内田真礼
安元広志:細谷佳正
東海林努:辻親八
斉藤裕介:鈴村健一
駒田滉:堀内賢雄
駒田澪緒:井上喜久子
駒田圭:中村悠一

※高田友美の高ははしごだかが正式表記。